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『かすていら』
  は、ある1人の男(26歳)の駄文を綴るためのブログです・・・・
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<デンコードー 火星中央店>

デンコードーは、太陽系の中では割と店舗の多い家電量販店だ。
特にこの火星中央店は、価格の安さと品数の多さ、
折り込みチラシによる割引きサービスなどから
火星首都圏200万人の生活を支えるマストショップとなっている。

そんな、みんな大好きデンコードーの宇宙船売り場(約10K㎡)に
僕の悲痛な叫びが響き渡った。


え゛っ?5万からですか!?

『えぇ。いっちゃん安いので、それくらいしますよ。
 失礼ですが、ご予算は・・・・?』


「・・・・・3万M$しか、無いです・・・・」

(※M$ → マーズドル)


美しい自然に溢れる、終の棲家となる星を探しに行くために
はるばる都内のデンコードーへ自家用宇宙船を買いに来た僕だったが、
まったく想定外のところでつまづいていた。
まさか、宇宙船がそんなに高いなんて・・・・
ちゃんとリサーチしときゃ良かった!バカカオレワヨ~・・・・

あぁ、こんな初歩的なところで
僕の新たな人生への旅立ちは頓挫してしまうのか?
やっぱり貧乏人はムチャな夢なんか見てないで、
部屋でしっとりニートでも満喫してろって事なのかい。
お金が無いと何にも出来ない・・・・お金が全て。
お金さえあれば・・・・・・


『あの・・・・もし宜しければ、中古船がもう少し安いので、
 そちらをご案内いたしましょうか?』


「へっ?中古なんて売ってるんですか?」

『ハイ。いかがいたしましょう?』

そりゃもう、是非!!


神は見捨ててはいなかった!この際中古でも構わない。
にわかに後光を帯び始めた店員さんを、小躍りしながら追いかけ
中古船売り場の方へ移動する。




中古船売り場は、デンコードーの裏手の倉庫横にあった。
大型の運送用タイプが1台と、小型が3台ほど
つつましく置かれている。

『3万M$だと、このタイプしか無いですねぇ。
 去年のモデルですが、原子力推進式で
 5分で亜光速まで加速できる、人気タイプですよ』


「ん~・・・なるべくトランクが広いヤツが良いんですけど」

『どういったご用途で?』

「旅、したいんすよね・・・」

は?




「あれ?・・・・あっちのヤツは、売り物じゃないの?」


僕は、倉庫のシャッターの隙間から見える
小型タイプらしき一台を指差した。

『え?あれ・・・こんな所にあったかな?
 えぇと・・・値札が付いてますね。売り物だったかな?』


「おっ、2万5千M$じゃないすか!いいですね!
 トランクルームも意外と広いし、バス・トイレ別だし」


『反動推進式でちょっと古いですが・・・・
 まぁ、旅をするにはピッタリかもしれませんね。』



なんて運がいいんだ僕は・・・これぞ運命のお導き。
まさに僕のために置いてあったかのような1台に、
すっかり心奪われてしまった。

「じゃ、コレください」

『かしこまりました。では、手続きを行いますので
 免許とクレジットカードをお預かりいたします。
 ・・・・はい、では15分ほどお待ちください』



ふぅ。一時はどうなることかと思ったけど、
なんとか宇宙船が買えて良かった・・・
これで晴れて、一国一城の主だな!


「あっ、とりあえず原付を積んでみっかな~♪」


駐輪場から裏手へ原付を持ってくると、
宇宙船の後部トランクルームへ入れてみる。
うん、結構余裕があるな。よく見ると簡易ベッドも付いてる。
これなら長旅にも不自由はしなさそうだ。

これでとりあえず、足は確保できた。
あとは数ヶ月分の食料と水、生活用品、発電機、万一のための通信機、
あと・・・・パスポートか。お金足りるかな・・・?


ん?


なんだ、このダンボール箱。


工具かな?



『お待たせしました』


振り向くと、先ほどの店員が戻ってきている。


『手続きが終了致しましたので、免許とカードをお返しいたします。
 お買い上げ、真にありがとうございました!』


「いや、こちらこそ良い買い物ができました。サンクス!」

僕は颯爽と宇宙船に乗り込むと、
窓を開け、親切な店員に手を振る。

『またのご来店をお待ちしております!』

「いや、たぶん当分は来ないと思うけど・・・まぁ、うん。また」


宇宙船を走行モードに切り替え、裏口からデンコードーをあとにする。

と、その時、




ドンッ!!



「うぉっ!なに?」


唐突な爆発音。
僕は驚き、音のした方向を確認した。

すると、
つい先ほどまで居た、デンコードー火星中央店の正面玄関から
もくもくと黒煙が上がっている。

・・・な、なんで?

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